NHI(Non-Human Identity)

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マシン・アプリケーション・自動化プロセス・AIエージェントなどを認証するためのデジタル認証情報の総称。サービスアカウント、APIキー、OAuthトークン、証明書、SSHキーなどが含まれる。人間の従業員に紐付く「人間のアイデンティティ」と対比される概念で、開発者やシステムが作成・運用する。

5つの主要タイプ

  • OAuthトークンとAPIキー — ベアラートークンとして機能し、保有するだけで即座にアクセスが許可される。アクセストークン(短命)とリフレッシュトークン(数ヶ月〜数年有効)に分かれる。
  • サービスアカウント — 24時間動作し続け、人間向けのMFAのような保護がかからないことが多い。しばしば管理者権限で作成される。
  • シークレット・認証情報 — ハードコードされたパスワード、SSHキー、DB接続文字列。GitHubへのコミットやログファイルへの露出がリスク(gitleaksのようなシークレットスキャナで検出する対象)。
  • 証明書とキー — TLS暗号化・コード署名・機械間認証に使用。失効漏れによるサービス停止のリスクもある。
  • AIエージェントと自動化 — 最も急成長しているカテゴリ。人間の介入なしに自律的に判断・実行し、しばしば過剰な権限を与えられて配置される。

なぜ課題なのか

現代の企業ではNHIが人間のアイデンティティを25〜50倍上回るとされ、生成AI・エージェント型AIの普及でこの比率はさらに加速している。従来のIAM/PAMは「人間の入退社イベント」「管理職による四半期レビュー」「MFAを含む対話的認証」を前提に設計されており、NHIはそのどの前提にも当てはまらない。

  • 可視性の欠如: AWS IAMロール、Azureサービスプリンシパル、Salesforce接続アプリ、Kubernetesサービスアカウントなどが各プラットフォームで個別に管理され、統合的な追跡がない。
  • ガバナンスギャップ: 四半期レビューは形骸化しがちで、「このサービスアカウントはまだ必要か」という問いに答えが出にくい。作成は数分ででき、廃止(デコミッション)は後回しにされる傾向が強い(API キーのオフボーディングプロセスを持つ組織は業界統計で約2割との指摘)。
  • トキシックコンビネーション: 個々のNHIは無害でも、組み合わさると意図しないアクセス経路が生まれる。例: 顧客データ読み取り権限を持つOAuthアプリと、データウェアハウス書き込み権限を持つサービスアカウントが連鎖すると、データ流出経路が出現する。

OWASP非ヒト型アイデンティティ Top リスク

  1. 不適切なオフボーディング — 離職・ベンダー契約終了後もトークンが有効なまま残る
  2. シークレット流出 — ログ・リポジトリ・エラーメッセージへの認証情報の露出
  3. サードパーティNHIの脆弱性 — ベンダー側の侵害が下流の顧客に波及する
  4. 過度な特権付与 — 最小権限より管理者権限が優先されがち(最小権限の原則違反)
  5. 環境間でのNHI再利用 — 開発環境の認証情報が本番環境でも使い回される

対策の方向性(2026年時点)

  • 包括的可視性: クラウド・SaaS・オンプレミス全域でのNHI発見の自動化。
  • ライフサイクルガバナンス: 所有者の割り当て、承認ワークフロー、自動デコミッション、認証情報の自動ローテーション。
  • 行動検知: 静的なインベントリ管理は作成直後に陳腐化するため、普段と異なるASN/リージョンからの認証、権限スコープの急変といった異常を継続監視する方向にシフトしている。
  • 最小特権の強制: 過剰権限アカウントの監査、OAuthスコープの見直し。

PAMとの関係

PAMはもともと人間の対話的セッションを前提に設計された仕組みで、そのままではワークロード同士の認証(service-to-service)にきれいに当てはまらない。「シークレットをVaultに入れてローテーションする」だけでは、パイプライン実行中の数十秒だけ必要な認証情報や、大量のエフェメラルなサービスが同時にスコープ付きアクセスを要求するケースに対応しづらい。vaultingは秘密の露出を減らせても、「今アクセスすべきか」「そのワークロードは名乗る通りの存在か」という認可判断そのものは解決しないため、NHI領域ではJust-in-Time(JIT)アクセスやワークロードID検証を組み合わせる「Workload IAM」という別分野が発展しつつある。

IAM/アクセス管理の中での位置づけ

このノートは「機械・AIエージェント側のアイデンティティ」を扱う。人間側の認証はMFA、権限昇格の管理はPAMを参照。

出典

作成日時: 2026-08-19 12:54 / 更新日時: 2026-08-19 12:54