Email Verification Protocol (EVP)
ブラウザが仲介してメールアドレスの所有権を暗号学的に検証する、確認メールを送らずに完了するメール確認のプロトコル。著者はDick Hardt(Hellō)とSam Goto(Google)。IETF Internet-Draft(draft-hardt-email-verification、2026年7月4日提出、個人提案でIETF標準としての正式な地位はまだない)として仕様化され、W3C WICGでもExplainerが公開されている。ChromeとMicrosoft EdgeでOrigin Trialが実施中で、参加メールプロバイダとしてGmailが明記されている。 #protocol #security #browser
解決しようとしている課題
従来の確認メール送信・OTP入力方式は「ユーザーが受信トレイを開いてコードやリンクを取得する」というアウトオブバンドな手順が必要で、次の2つの問題があった。
- ユーザーがサイトを離脱することによるコンバージョン率低下
- 悪意あるサイトによるOTP詐取(フィッシング)への脆弱性
仕組み
- ユーザーがフォームでメールアドレスを選択する(オートフィル的な体験)
- ブラウザがメールプロバイダ(issuer)と直接通信し、Email Verification Token (EVT) というJWTを取得する。EVTには検証済みメールアドレスとブラウザの公開鍵が入るが、どのサイト(RP: Relying Party)向けかは含まれない
- ブラウザ側でKey Binding JWT (KB-JWT)を作り、EVTと結合してRPに提示する(RPのオリジン・nonce等を含む)
- RPはサーバー側でトークンの署名やDNS由来の発行者情報を検証する
メールプロバイダは.well-known/email-verificationエンドポイントを用意し、トークン発行エンドポイントや署名アルゴリズム(デフォルトEd25519)などのメタデータを公開する。
プライバシー設計
三者モデルの肝は「発行者(メールプロバイダ)がRPの正体を知らない」点。Well-known/Accountsの取得時やトークン発行リクエスト時にRefererやOriginヘッダを意図的に省略する設計になっており、メールプロバイダ側は「ユーザーが今どこかで認証中」だとは分かっても「どのサイトか」は分からないようになっている。RPごとに異なるプライベートなメールアドレスを使い、サイト間相関を防ぐ仕組みも想定されている。
想定用途
アカウント新規作成時のメール確認、パスワードレスサインイン、アカウント復旧フローなど。
FedCMとの関係
同じくブラウザが第三者とRPの間を仲介し、Cookieに頼らず身元・所有権を証明するという設計思想を共有する。FedCMは外部IdPのアカウントによるログイン全般を扱うのに対し、EVPはメールアドレス所有権の検証に特化している。
出典
- Email Verification Protocol - IETF Internet-Draft
- draft-hardt-email-verification-01 - Datatracker
- Email Verification API - WICG Explainer
- Test the Email Verification Protocol with an origin trial - Chrome for Developers