EU AI Act

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EUの包括的なAI規制法(Regulation (EU) 2024/1689)。世界初の包括的AI規制とされ、2024-08-01に発効し、義務ごとに段階的に適用が始まっている。EU域内で活動する企業だけでなく、EU市場にAIシステム・モデルを提供する域外企業にも適用される(AnthropicがClaudeの透かしを全世界適用したのはこの文脈)。

リスクベースアプローチ

AIシステムをリスクの大きさで4段階に分類し、段階ごとに義務の重さを変えるのが基本設計。

リスク区分 義務
許容できないリスク 公的機関によるソーシャルスコアリング、サブリミナルな行動操作、公共空間でのリアルタイム遠隔生体認証(法執行の限定的例外あり) 禁止
ハイリスク 雇用・教育・与信・法執行・重要インフラでのAI(Annex III)、規制対象製品の安全部品(Annex I) リスク管理・技術文書・人間による監督などの厳格な要求
限定リスク チャットボット、生成AI、感情認識、ディープフェイク 透明性義務(第50条)
最小リスク それ以外(スパムフィルタ等) 義務なし

第50条: 透明性義務

生成AIに直結する条文で、2026-08-02から適用。主な内容:

  • 人と直接対話するAIシステム(チャットボット等)は、AIと対話していることを本人に知らせる(明白な場合を除く)
  • 合成コンテンツ(音声・画像・動画・テキスト)を生成するAIシステム(GPAIを含む)のプロバイダーは、出力を機械可読な形式でマーキングし、人工的に生成・操作されたと検出可能にする。技術的に実現可能な範囲で、効果的・相互運用可能・頑健・信頼できる方式であること
  • 感情認識・生体分類システムのデプロイヤーは対象者に稼働を通知する
  • ディープフェイクのデプロイヤーは人工生成であることを開示する(芸術・風刺目的には緩和あり)

このテキストへの機械可読マーキング義務がLLMテキスト電子透かしの商用実装(Claudeのテキスト電子透かし導入 (2026-08)など)の直接の規制ドライバーになっている。マーキングの技術標準は Code of Practice とEU標準化作業で策定が進められている段階。

適用除外もある: 標準的な編集の補助機能で入力の意味を実質的に変えないもの、犯罪捜査目的で法律上認められたもの、人間に露出しないmachine-to-machine通信など。

GPAI(汎用AIモデル)への義務

第53条・第55条で、GPAIモデル(LLMの基盤モデルが典型)のプロバイダーに技術文書・学習データ要約の公開・著作権ポリシーなどを義務付ける。2025-08-02以降に市場投入されたモデルから適用(それ以前のモデルは2027-08-02までに対応)。システミックリスクを持つ大規模モデルには追加義務がある。

  • 欧州委員会は2025-07に自主的な遵守ツールとして General-Purpose AI Code of Practice(Transparency / Copyright / Safety & Security の3章構成)を公表した。署名は任意だが、署名すれば遵守の立証手段として使える。

タイムライン

日付 内容
2024-08-01 発効
2025-02-02 禁止AI(許容できないリスク)の適用開始
2025-08-02 GPAIモデルの義務の適用開始(新規モデル)
2026-08-02 第50条(透明性義務)を含む本体の適用開始。GPAI義務の執行(情報要求・モデル回収等)もここから
2027-12-02 Annex III型ハイリスクシステムの義務の適用(延期後)
2028-08-02 Annex I型(規制製品組み込み)ハイリスクの義務の適用(延期後)

当初ハイリスク義務は2026-08-02適用予定だったが、技術標準や各国監督体制の準備遅れを受けて、Digital Omnibus on AI(Regulation (EU) 2026/1744、2026-07-27発効)で上記の通り延期された。第50条の透明性義務と第4条のAIリテラシー義務は延期されず元のスケジュールのまま。

罰則

違反区分ごとの段階制で、最大は禁止AI違反の3,500万ユーロまたは全世界年間売上高の7%のいずれか高い方

出典

作成日時: 2026-08-12 23:33 / 更新日時: 2026-08-12 23:33