ラプラス変換
#math #signal-processing #control-theory
時間領域の関数 f(t) を複素変数 s の関数に写す積分変換。
F(s) = \int_0^\infty f(t)\, e^{-st}\, dt, \qquad s = \sigma + j\omega
一番のご利益は、時間領域での微分・積分が、s領域では「s を掛ける/s で割る」という代数演算になること。微分方程式が代数方程式に変換されるので、「変換 → 代数的に解く → 逆変換」という手順で常微分方程式が機械的に解ける。初期条件も変換の時点で自然に式へ組み込まれる。
直感: 「減衰因子つきフーリエ変換」
フーリエ変換との関係で捉えるのが分かりやすい。
- フーリエ変換は e^{-j\omega t} を掛けて積分するが、信号が絶対可積分でない(発散する)と収束しない
- そこで先に減衰因子 e^{-\sigma t} を掛けて収束させてからフーリエ変換する、というのがラプラス変換。2つの因子をまとめたのが e^{-st}(s = \sigma + j\omega)
- \sigma = 0 とおけば(両側変換では)フーリエ変換そのものに一致する。つまりラプラス変換はフーリエ変換の一般化で、フーリエ変換が存在しない関数にも適用できる
減衰をどこまで強くすれば収束するかが収束域(ROC: Region of Convergence)で、\mathrm{Re}(s) > a の右半平面になる。
主な応用
- 制御理論 — システムの入出力関係を伝達関数 G(s) で表す。分母多項式の根(極)の位置で安定性が判定できる(極がすべて左半平面にあれば安定)
- 電気回路 — L や C を含む回路方程式(微積分方程式)が、インピーダンス sL, 1/(sC) を使った代数計算になる
- 微分方程式の求解 — 上述のとおり
歴史
名前の由来は Pierre-Simon Laplace。1814年頃の確率論の研究(母関数)が源流。工学で実用化したのは Oliver Heaviside の「演算子法(operational calculus)」で、微分演算子を代数的に扱う手法として回路解析に使われた。当初は数学的正当化が曖昧だったが、後にラプラス変換として厳密に基礎づけられ、第二次大戦後に工学の標準ツールになった。
逆変換・周辺
逆変換 — 理論上は Bromwich 積分(複素積分)
f(t) = \frac{1}{2\pi i} \lim_{T\to\infty} \int_{\gamma - iT}^{\gamma + iT} e^{st} F(s)\, dsだが、実務では部分分数分解して変換表を引くのが普通。
- z変換 — 離散時間版の対応物。z = e^{sT} の置換で繋がっており、デジタル信号処理・デジタル制御でのラプラス変換の役割を担う。
周波数領域の変換の中での位置づけ
フーリエ変換が「周波数分解」そのものを目的にするのに対し、こちらは減衰因子を加えた一般化によって発散する信号や過渡応答を扱えるようにし、微分方程式・制御・回路といった「システムを解く」方向に特化している。