クスクス

デュラム小麦のセモリナ粉を粒状に丸めて蒸した、北アフリカ・マグレブ地方(モロッコ・アルジェリア・チュニジア・モーリタニアなど)の伝統的な主食。粒の見た目は粟のような雑穀に近いが、小麦粉から成形して作るので分類上はパスタの一種であり、世界最古のパスタ料理のひとつとも言われる。 #food #食文化

トウモロコシ粉を薄く焼いたトルティーヤがメキシコの主食であるのと同じ位置づけで、マグレブでは「クスクス」がそのまま「食事」を指す語として使われる。

作り方(伝統的な製法)

  1. セモリナ粉に水を振りかけ、手で揉んで小さな粒に丸める
  2. 乾いた粉をまぶして粒同士がくっつかないようにする
  3. 篩(ふるい)にかけて粒径を揃える
  4. 1〜3を繰り返し、すべてのセモリナを粒にする

かなり労働集約的な工程で、伝統的には女性たちが共同で大量に作り、乾燥させて保存する。

調理には couscoussier(クスクシエ) という二段式の蒸し器を使う。下段で肉と野菜のシチューを煮込み、その蒸気で上段のクスクスを蒸す。蒸す→ほぐす→また蒸す、を数回繰り返すことで、シチューの香りが粒に移りつつ粒立ちが良くなる。

現代の市販品はほぼ「インスタント(プレクック済み)」で、熱湯やスープを注いで5〜10分蒸らすだけで食べられる。

粒のサイズによる分類

種類
極細 約1mm
標準(モロッコ風) 約2mm
ベルクーク (berkoukes) 3mm以上
モグラベイ (moghrabieh, レバノン風) 5〜6mm

日本のスーパーで一般に売られているのは標準サイズ。「パールクスクス」「イスラエルクスクス」として売られている大粒のものは、後述のとおり製法が別物。

戻し方の目安

  • 乾燥重量に対して同量〜1.2倍程度の熱湯を注ぎ、ラップをして5〜10分置いてからフォークでほぐす
  • 戻すと約2.2倍に膨らむ
  • 1人分は主食として食べるなら乾燥50〜80g、サラダの具なら30g程度

食べ方

  • 蒸した粒にバターやオリーブオイルを絡め、肉・野菜のシチュー(タジンなど)をかける ← 本場の基本形
  • タブレ (taboulé) — 戻したクスクスをトマト・キュウリ・パセリ・レモン・オリーブオイルで和えた冷たいサラダ。フランス〜地中海沿岸の定番で、日本でクスクスを買う人の用途もだいたいこれ
  • スープに入れる、炊き込みご飯的に使う、デザートにする、など

ユネスコ無形文化遺産

2020年12月、アルジェリア・モーリタニア・モロッコ・チュニジアの4カ国共同申請で、クスクスの生産と消費に関する知識・慣行が無形文化遺産に登録された。マグレブ諸国は政治的に対立を抱えているが、その中での共同申請という点でも注目された。

イスラエルクスクス(プティティム)は別物

「イスラエルクスクス」「パールクスクス」の名で売られている5mm前後の粒は、セモリナを手で丸めたものではなく、小麦生地を押し出し成形(extrude)して乾燥・焙煎したパスタ

1953年、イスラエルの緊縮期(ツェナ)に、当時首相だったダヴィド・ベン=グリオンが食品メーカーOsemに「米の代用になる小麦ベースの主食」を作らせたのが起源とされる。アラブ諸国から来たミズラヒ系ユダヤ人にとって米は主食だったが、当時は高価で入手困難だった。当初は長粒米の形をしていたことから、俗に「ベン=グリオンの米 (Ben-Gurion’s rice)」と呼ばれる。後から球状のものが追加された。

なお、同程度のサイズで手で丸めて作るパレスチナの「マフトゥール (maftoul)」が別に存在し、どちらが起源かという呼称をめぐる議論もある。

語源

アラビア語 kuskus から。「打つ・砕く」を意味する kaskasa に由来するとされるが、ベルベル語起源の可能性が高く、語根 KS は「よく丸められた」を意味する。

出典

作成日時: 2026-08-31 21:20 / 更新日時: 2026-08-31 21:20