オートミール
オーツ麦(燕麦, Avena sativa)の脱穀した粒を、蒸してローラーで潰す・刻むなどの加工をした穀物食品。加工度によってスティールカットオーツ(粒を刻んだだけ)、ロールドオーツ(蒸して平たく潰したもの)、クイック/インスタントオーツ(さらに細かく潰し加熱時間を短くしたもの)に分かれる。
ダイエット食材として語られることが多いが、「オートミールという食品に痩せる作用がある」というより、主食を置き換える対象としての条件が良いという話に整理できる。
単位重量あたりはむしろ高カロリー
日本食品標準成分表2020年版(八訂)の値。
| エネルギー | 炭水化物 | 食物繊維総量 | |
|---|---|---|---|
| オートミール 100g(乾) | 350 kcal | 69.1 g | 9.4 g |
| 水稲めし・精白米 100g | 156 kcal | 37.1 g | 1.5 g |
乾燥重量と炊飯後の重量を比べているので当然だが、「オートミールは低カロリー」は誤り。効いているのは1食分の量のほう。
| エネルギー | 食物繊維 | |
|---|---|---|
| オートミール 30g(1食の目安) | 約105 kcal | 約2.8 g |
| ごはん 150g(茶碗1杯) | 約234 kcal | 約2.3 g |
主食をそのまま置き換えると摂取エネルギーが半分以下になる。これが最大の要因で、後述の生理作用より先に来る。
食物繊維の差は言われるほど大きくない
「白米の食物繊維はほぼゼロ(0.3g/100g)」という比較をよく見るが、これは七訂までの値。八訂ではめし・精白米の食物繊維がAOAC 2011.25法で測定され、1.5g/100gと5倍になっている。一方でオートミールの9.4gはプロスキー変法系の値であり、測定法が違うものを並べている点に注意がいる。1食分で見ると2.8g対2.3gで、差はそれほど劇的ではない。
とはいえ日本人の食物繊維摂取量は平均14g/日前後で、食事摂取基準2020年版の目標量(18〜64歳で男性21g以上・女性18g以上)に届いていないので、増える方向であること自体には意味がある。
水を吸って膨らむ
乾燥30gが水や牛乳で3倍前後にふやける。同じ「満腹になるまで食べる」でも体積あたりのエネルギー(エネルギー密度)が下がるので、総摂取量が減りやすい。
β-グルカンの生理作用
オーツ麦に多い水溶性食物繊維。水に溶けて粘性を持つことが機能の中心にある。
食後血糖・インスリンの抑制
食後血糖応答についてのシステマティックレビュー/メタ解析(Eur J Clin Nutr, 2021)では、オーツβ-グルカン摂取により
- 血糖 iAUC が23%低下、ピークが28%低下
- インスリン iAUC が22%低下、ピークが24%低下
用量依存で、利用可能炭水化物30gあたりβ-グルカン1gにつき8〜11%程度の低下。
分子量が効く
同じ量でも分子量によって効果が違う(Eur J Clin Nutr, 2022のメタ回帰)。利用可能炭水化物30gあたりβ-グルカン1gあたりのiAUC低下率は
- 分子量 <300 kg/mol: 5%
- 300〜1000 kg/mol: 7%
- ≥1000 kg/mol: 8%
で、有意な用量反応関係が認められたのは高分子量のものだけだった。高分子量なら2.5〜2.9g/30g avCHOで20%以上の低下が得られる。加工や粉砕・加熱で分子量が下がるため、インスタント系よりロールドオーツ寄りのほうが理屈上は有利という含意になる。
満腹感の機序
粘性による胃排出の遅延に加え、腸管ホルモンを介した経路が提案されている。Mathewsらのレビュー(Crit Rev Food Sci Nutr, 2021)では、β-グルカン摂取でグレリンが低下しGLP-1が有意に増加した変化が報告されている。また特定の腸内細菌の増殖を促して短鎖脂肪酸を産生させる経路も示唆されているが、こちらは追加研究が必要とレビュー自身が明記している。
同レビューは、観察研究と臨床研究の全体を通じて、オーツ麦・大麦のβ-グルカンが体重増加と肥満の予防を支持する、と結論している。研究で使われた摂取量は1日3〜7g(調理済みオートミール1.5カップで約3g)。
落とし穴
- 量を測らずに食べる。乾燥重量で30〜40gが1食の目安。
- 砂糖・シロップ・グラノーラ的なトッピングを足してカロリーが元に戻る。
- 主食を減らさずに追加する。
- 水分を吸う性質があるため、水分摂取が少ないと逆に便通が悪くなることがある。
出典
- オートミール - 食品成分データベース(文部科学省)
- 食物繊維 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
- 飯(めし)類の食物繊維総量の推定値表付き! 成分表2020年版(八訂)の「食物繊維」の見方と推定のくふう
- The effect of oat β-glucan on postprandial blood glucose and insulin responses: a systematic review and meta-analysis (Eur J Clin Nutr, 2021)
- The importance of molecular weight in determining the minimum dose of oat β-glucan required to reduce the glycaemic response (Eur J Clin Nutr, 2022)
- The effect of cereal β-glucan on body weight and adiposity: A review of efficacy and mechanism of action (Crit Rev Food Sci Nutr, 2021)
- Effect of β-glucan from oats and barley on weight loss and adiposity(上記レビューの解説記事)