Business Source License
MariaDB社が考案したsource-availableライセンス。SPDX識別子はBUSL-1.1(Boost Software LicenseのBSLと衝突するため)。「一定期間は商用利用を制限するが、期日が来たら自動的にオープンソースライセンスへ変わる」時限式が最大の特徴。MariaDB社のMaxScaleで実運用が始まり、"Business Source License"はMariaDB社の商標。
仕組み
デフォルトでは本番利用(production use)を禁止した上で、ライセンサーが3つのパラメータを埋めて運用する。
- Additional Use Grant: 本番利用を部分的に許可する追加条項。「自社の競合となるマネージドサービスとしての提供以外はすべて可」のように書くのが典型で、実質的な制限内容はここで決まる
- Change Date: 公開から最長4年以内に設定する期日。各バージョンごとに設定される
- Change License: Change Date到来後に適用されるライセンス。GPLv2以降と互換のオープンソースライセンスでなければならない
つまり最新バージョンだけがsource-availableで、古いバージョンは順次OSS化されていく。「競合ベンダーには最新版を使わせないが、コミュニティにはいずれ全部渡す」という妥協点の設計。
オープンソースではない
本番利用の制限がある間はOpen Source Definitionを満たさないため、OSI承認ライセンスではなくsource-availableに分類される。MariaDB社自身も「proprietaryとopen sourceの中間の妥協」と位置づけている。
採用例
- MariaDB MaxScale: 本家。MariaDB Serverとの接続プロキシ
- CockroachDB (2019): Apache 2.0から移行
- HashiCorp (2023年8月): Terraform・Vaultなど全製品をMPL 2.0からBUSL 1.1へ変更。「HashiCorpと競合する製品への組み込み・ホスティング」を禁じるAdditional Use Grantが曖昧だと批判され、TerraformからOpenTofu(Linux Foundation傘下)、VaultからOpenBaoがフォークされた
- SurrealDB、EMQX など
SSPL同様、ライセンス変更が大型フォークを誘発した事例(OpenTofu)を生んでいる。
ソフトウェアライセンスの中での位置づけ
コピーレフトの拡張であるAGPL/SSPLとは別系統のsource-available。競合排除を「公開義務の重さ」ではなく「本番利用制限+時限式OSS化」で実現するアプローチ。